こんにちは! フィフス・フロアのしおりもです。
9月1日に、一次創作をする人のための Mastodon インスタンスである ichiji.social を公開しました。
公開から1週間弱で1,000ユーザを突破したとともに、トゥート数も増え続けていて、とても活発な交流に繋がっているようです。
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ところで、私は、一次創作の活動をする人は、昔よりもずっと増えていると感じます。
作品制作に用いる手段も以前では考えられないほど豊富で身近になり、発表する場所だって、比べるべくもないほど増えています。
しかし、それに反して、普段の生活やいわゆる「世間」のなかでは、「一次創作」という活動はあまり認知されていないな、と感じることがあります。
ichiji.social がそんな現状を変えてくれることを願いますが、今はまだその風潮は強く存在していて、これからもまだしばらく続きそうです。
この記事を読んでくれている方のなかにも、同じように感じる方がいるでしょうか?
一次創作を「打ち明ける」ということ
私のなかで、その象徴になっている出来事があります。
今年(2017年)の年明けのことです。年末年始の帰省で実家に帰っている間に、中学生の頃の同級生たちと5人くらいで遊びにいくことになりました。
もう10年ぶりに会う友人たちだったので、積もる話はたくさんありました。会が終わって、自宅の方向が同じ友人ひとりを助手席に乗せて、帰りの車を運転していくことになりました。
私は中学生だった当時から、ちょっとしたゲームを作っていたり、イラストや小説を書いていて、あまりそれを隠していませんでした。
それは助手席の友人も知っていて、そういう私にだから言うんだけど、と友人は切り出しました。
それは、今、個人的な趣味として短歌を書いているんだ、という話でした。
中学生だった当時は、その友人は読書が趣味で、自分で何かを制作するという感じではありませんでした。その友人が、10年ぶりに会ったとときに、自分と同じ創作活動をしているということは、とても嬉しい気持ちのすることでした。
地元に住んでいる友人たちにも打ち明けてみたらどうか、と勧めてみましたが、友人としては、それには強い抵抗があるようでした。
というのは、やっぱりそういうことが、奇異な目で見られたり、冷やかされたりするからだ、ということでした。
私はそれに強く共感すると同時に、不思議な気持ちになりました。
どうして、「創作活動が趣味だ」ということは、世間に対して奇異な印象を与えるのでしょうか?
登山を趣味としている人は、日常会話のなかで「趣味は何ですか?」と訊かれたら、「登山です」と答えることができます。水泳でもそうだし、チェスでもそうですね。
しかし、創作活動の場合には、相手も同好の士でない限り、登山やチェスのような反応が得られることはあまりありません。何度も言いますが、奇異の目で見られ、ことによっては冷やかされることだってあります。
この感覚は、私のなかにも確かにぼんやりとありました。ただ、私はそれに触れなくていい環境を選ひ続けてきた結果、最近はあまりそういう課題が存在することを意識しなくなっていました。
登山もかつては変わり者の趣味だった
実は、調べてみて知ったのですが、今ではメジャーな趣味のひとつとして認知されている「登山」も、その昔には異端な趣味とされていて、冷やかしの対象になっていた時代がありました。
登山は、死と隣り合わせの行為です。
それでも古来から存在するのは、物理的に巨大な山か畏怖の対象であり、登山と言う行為に祭事としての側面があったからでした。また、狩猟採集が活発な時代には、食料調達の手段としての価値も持っていました。
趣味として山に上ると言う考えが世間に受け入れられていったのは、戦後になってからでした。
そのきっかけには、大きく「スキーブーム」と「登山専門店の登場」のふたつのきっかけがあったようです。
スキーブームは、登山をする人の裾野を爆発的に広げたようです。登山道や山小屋などが整備され、登山のために命をかける必要がなくなったことで、「滑るために登る」という人をたくさん増やしました。
このことには良し悪しはあるとは思いますが、「命をかけた不合理な行為」から「消費活動のために必要な行為」にカテゴリーが変わったことは、趣味としての登山の位置づけに大きな影響を与えたようです。
登山専門店が存在することは、それにもまして重要だと考えています。
「消費の対象とすべき文化が、目に見える実体として存在する」ということは、登山家でない人に対する象徴的な意味合いを持っていると思います。
それは登山に限った話ではないかもしれません。ある文化のための「専門店」があることが、その文化が市民権を獲得するために大切だという例を、登山以外にもいくつか思い浮かべることができます。
私は、これと同じようなことが、一次創作活動についても起こってほしいと考えています。それが今の活動を続けている大きな理由で、 ichiji.social も、その一環なのでした。
ichiji.social を使おう
しかし、なかなかすぐにそうはならないので、それまでは同好の士の間でモメンタムを維持していくことも大切だと思います。
ichiji.social のベースとなっている Mastodon には、実利的な便利機能がたくさんあります。それらを差し置いて、私が個人的に使っていていちばん心地よく感じられるのは、そこにいるみんなが創作活動をしている人だという感覚です。
翻っていえば、どれだけ一次創作の話をしても、ここでは冷ややかな目で見られることがないんだ、という安心です。もちろんそれは、今 ichiji.social にいる人たちの心遣いやマナーのおかげです。
私個人は、そのことで創作活動が随分やりやすくなりました。まだあまり活発な活動は再開できていないですが、それはまだ今のライフスタイルに慣れていないというのが理由です(結婚・育児と創作活動の両立は、また別な機会に書いてみたいテーマです)。
ichiji.social を使いはじめてから、「こういう感じなら活動の継続がしやすいんじゃないか」という考えが、ときどき思いつくようになりました。
まだお使いでない創作者の方は、ぜひ一度検討してみてください。Twitter などの SNS でいわゆる「創作垢」を持っている人なら、試してみる価値が充分にあると思います。
ichiji.social のこれから
私たちはこれから、 ichiji.social がどういう風に使われいるのかを参考にしながら、一次創作の活動をよりよく支援する方法を考えていきたいと思いっています。
私たちは、もともと情報技術(いわゆるIT)の会社なので、インターネットサービスての貢献がメインになるだろうと思っています。
もう少し具体的にいうと、 Mastodon をベースに、インターネットで一番快適に一次創作の活動ができるサービスを提供していきたいと思っています。それは SNS の機能としての部分もあれば、コミュニティ運営としての部分もあると思います。
また、 ichiji.social のユーザや機能を絡めた即売会を主催してもおもしろいかもな、と考えたりしています。
ichiji.social を既に使ってくれている方も、今は検討中だという方も、どちらもよろしくお願いします。
寄付や支援について
最後に、寄付や支援について。
ありがたいことに、利用者や興味を持っている方から「サーバなどの運営費用の助けになるように寄付をしたい」という声をいただくことがときどきあります。
実際に他の Mastodon インスタンスでは寄付を受け付けている事例もあるようなので、それらを参考に、寄付の受け付けの方法を検討している最中です。
もし現時点で興味がある人は、 contact@5thfloor.co.jp や Mastodon 内の運営チームアカウント、 Twitter (@uchinoko_betaなどでご連絡をください。準備が整い次第、寄付の方法をご案内させていただきたいと思います。
また、私たちは営利企業なので、Mastodon 以外のサービスやショップを使っていただくことも、強力な支援になります。
この機会に簡単に紹介させていただきます。
- うちのこまとめ - オリジナルキャラクターのプロフィールをまとめるページを、手軽に作れるサイトです。無料で使えます。便利な有料機能もあります。
- ぷちのこ - オリジナルキャラクターのオーダーメイドフィギュアが、1体18,000円から作成できるサービスです。
- hondel - サークル参加のためのグッズや創作活動に役立つアイテムを専門に取り扱っている通販サイトです。
寄付やご支援だけでなく、応援の言葉が届くことも、とても励みになっています。運営継続のためのとても重要な栄養になります。
思ったことをつらつらと書いていたら随分長くなってしまいました。
これからも ichiji.social をよろしくお願いします。
参考文献と出典
- 『明解日本登山史』(布川欣一, 2015)
- 『モンベル 7つの決断』(辰野勇, 2014)
- File:Mastodon color.jpg